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栃木市のユニークな郷土玩具

掲載日: 文化と歴史
栃木市のユニークな郷土玩具
うずまの鯰(なまず)。

ユニークな郷土玩具

栃木市には「うずまの鯰(なまず)」や「火防獅子(かぼうじし)」などユニークな土産物がある。いずれも地元出身の彫刻家、鈴木賢二(1906~87)が考案した郷土玩具である。

うずまの鯰の言い伝え

「うずまの鯰」は、黒く塗られた1枚の杓文字にもう1枚の杓文字の上半分を麻紐で括ってカスタネット風としたものに、目玉を描いて、髭(ひげ)を付けたものである。口から飛び出た赤い舌が、とても愛くるしい。この郷土玩具には次のような話が伝えられている。

昔、日照り続きの年があって、巴波川(うずまがわ)の水が干上がってしまった。

ある日のこと、百姓が巴波川のそばを通りかかると一匹の鯰が、わずかばかりに残った水たまりの中で、もがき苦しんでいた。可哀想に思った百姓は、持っていた手ぬぐいに鯰をくるんで深い淵に放してあげた。

それからしばらくたったある日、巴波川に大雨が降り、氾濫した川に百姓の子どもが流されてしまった。流れが速くてどうすることもできないと諦めていたその時、たくさんの鯰が集まってきて、子どもを岸までおしやってくれた。鯰の恩を忘れないために、杓文字で作った鯰の玩具を子どもに持たせてあげると、病気もせずに健やかに育ったという。

「うずまの鯰」は、病気除け、災難除けの郷土玩具として、また最近では地震除けの御守りとして買い求める人が多い栃木市観光協会の観光総合案内所などで購入することができる。

栃木市の巴波川。

火事から守る「火防獅子(かぼうじし)」

「火防獅子」は、栃木市特産の下駄の端材を利用して作られた郷土玩具である。モチーフとなった阿吽(あうん)の獅子は、大平山神社に伝わる伝説が基となった。それは、天正12(1584)年の北条勢による皆川城攻めで、大平山神社も焼け落ちてしまったが、木彫りの獅子だけが戦火から免れた。

それ以来、獅子は神社の社宝となり、火防の護符として崇敬されるようになった。新築祝いとして買い求める人も多かったが、現在は入手が難しい郷土玩具となっている。

とちぎ山車会館の前に設置された火防獅子。
火防獅子にもさまざまな形がある。
栃木下駄。栃木市は良質な桐下駄の生産地としても知られていた。

篠﨑 茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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