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Special feature

畳職人として、
父として。

宇都宮市内で家業の畳店を継ぐことを決め、 京都にて「畳・一級技能士」を取得後、 2代目として畳職人を務める 髙野光朗(みつお)さん。
仕事と家庭の境界線が ゆるやかに溶け合う暮らしのなかで、
髙野さんは手しごとの時間と、 家族との日常を大切にしています。
代々受け継がれてきた技と想い、 そして家族との絆。
畳職人として、父として、 日々の暮らしを丁寧に紡いでいく 髙野さんのもとを訪ねました。

一枚一枚、畳を丁寧に運ぶ髙野さん。

畳職人としての今の自分

父が始めた畳店を継ぎ、現在は二代目として店を営んでいます。実家が畳屋だったので、小さい頃から畳は当たり前のように身近な存在でしたが「畳職人として生きていこう」と、覚悟を決めたのは中学3年生のとき。もともと地元を一度離れて暮らしてみたいという思いもあって、高校進学はせず、16歳で京都の畳店に住み込みで修行に入りました。

ただ、専門的な技術を学ぶ訓練校に入れるのは18歳から。ですから、それまでの2年間は、畳店と住み込み先との往復の日々。先輩職人の仕事を見て流れを覚えたり、手ほどきを受けながら、少しずつ体で学んでいきました。仕事といっても、最初の半年ほどはひたすら掃除や道具の手入れといった裏方の作業。振り返ると、その「見えない部分に手をかける」経験こそ、今の自分の基盤になっていると思います。
修行時代から大切に使い続けている畳包丁。心を込めて刃を研いでいく。
作業によって機械も使用。収まりを第一に慎重に操作する。
畳は見た目だけでなく、中に使う素材や仕上がりの“収まり”で良し悪しが決まるもの。丁寧に、まっすぐに。そう教えられ、体に染みついた姿勢は、今もずっと変わっていません。

その後、訓練校に入り、通算で約4年間、京都で畳に向き合ってきました。そして地元へ戻り、現在に至ります。

畳の仕事はどちらかというと地味で、派手な世界ではありませんが、自分の手で仕上げた一枚一枚が、暮らしの中にしっかり と根付いていく。その実感があるからこそ、長く続けてこられたんだと思います。「い草の香りが…」とか「昔ながらの和室が …」というアプローチだけでは、今の暮らしにはなかなか馴染まない場面もあります。だからこそ、畳の素材や色、サイズ、使い方を工夫しながら、生活に自然に馴染むようなかたちで提案していくこと。そこに、これからの畳のあり方や可能性があるんじゃないかと思っています。
空間を演出するさまざまな柄の美しい畳縁。

父としての家族との暮らし

わが家は、妻と高校1年生・中学1年生の息子との4人暮らし。もともとフローリングだったリビングには、自分で作った畳を入れています。息子たちはその上でのびのびとくつろいでいて、友だちもよく遊びに来ては畳の上に寝転んだり、おしゃべりを楽しんだりしています。その様子を見るたび、職人としても父親としても、ちょっと誇らしい気持ちになります。

子育てについて特別な教育方針があるわけではありませんが、小さなことの積み重ねは大切にしています。たとえば、子どもたちの箸の持ち方。小さい頃から「きちんと持とう」と伝えてきました。箸の持ち方には、その人の所作や姿勢が出る。道具を丁寧に扱うことの延長線上に人との関わり方やものごとの捉え方があると思っているので、そういったことは自然に伝わっていたら嬉しいですね。

息子たちとは、節目のときにしっかり話をするようにしています。高校と中学にそれぞれ入学したときには、長男には「もう一人前の男なんだから、自分の頭で考えて動けよ」と、次男には「君は今日から“半分大人”。子どもの考えは卒業して、自分で判断しなさい」と伝えました。正直、親があれこれ悩んで手をかけすぎるのもしんどいし、結局、思春期の子なんて親の言うことはそうそう聞かない(笑)。

もちろん、まだ親として口を出す場面もあるけれど、自分で考える力を育てていってほしいという気持ちがあります。
家族がくつろぐ和紙表畳のリビングは、心地よく使い込まれた風合いが魅力。息子さんのリクエストで、自室にも爽やかなブルーの和紙表畳を。
さりげなく飾られたお子さんの作品や写真、身長が刻まれた壁など、あたたかな家族愛が感じられるセンスの良い住まい。
子どもたちが将来どんな仕事に就くかはわかりませんが、ただひとつ願うのは、「目の前の仕事に素直に向き合ってほしい」ということです。どんな理由で選んだ仕事でも、自分なりに意味ややりがいを見つけて、まっすぐに取り組んでいけるかどうか。それが何より大切だと思っています。技術や知識ももちろん大事ですが、それ以前に「素直に取り組む姿勢」が、その人の仕事ぶりににじむもの。だからこそ、うちの子たちにも、そんなふうに仕事と向き合える人になってほしいと願っています。

家族それぞれで忙しくなってしまった今の夢は、長男が気に入っているラーメン屋さんに家族そろって行くこと。みんながラーメンをすすっているのを眺めながら、一杯飲めたら…。そんな何気ない日常こそ、家族としてかけがえのない幸せなんでしょうね、きっと。

髙野光朗さん

宇都宮市在住。「有限会社 髙野畳店」の二代目として、伝統技術を守りながら、現代の暮らしに合った畳のあり方を日々模索中。家庭では二児の父。家のインテリアは妻とバランスよく決めており、自身の好みである古物やアメリカンなテイストを取り入れるときは、まず妻に相談するのがルール。畳のある暮らしを家族と共に楽しみながら、職人としても、親としても畳と向き合っている。

有限会社 髙野畳店 
宇都宮市駒生町1293-5 TEL.028-622-5971
https://takano-u-city.com


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