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そばの歴史と文化に触れながら、そば街道を巡ってみよう

掲載日: 文化と歴史
そばの歴史と文化に触れながら、そば街道を巡ってみよう

栃木の新そば、秋の味覚を楽しもう!

新そばの季節がやって来た。栃木県は日本でも有数のそばどころ。なかでも今市そば(日光市)、仙波そば(佐野市)、出流そば(栃木市)などはご当地そばとして広く知られている。また、茂木町、市貝町、那須烏山市、那珂川町では「八溝そば街道」、日光市、鹿沼市、栃木市は「日光例幣使そば街道」を立ち上げて、それぞれの店が自慢のそばを提供している。風光明媚な地域を巡りながら、各地の独特なそば文化を楽しむことができる。

栃木に根付くそばの歴史と文化

ソバはタデ科の一年生草本である。縄文時代の遺跡からも多数発見されていることから、この時代から食用になっていたと考えられる。生育が早く、米ができないような荒地や寒冷地でも栽培ができたので、山間部のやせ地では特に重宝された。

そばぶち(打ち)の様子(那須烏山市) 栃木ではそばを「ぶつ」という

そばと言えば細長い麺、いわゆる「そば切り」を想像する人が多いだろう。こうした食べ方が庶民に広まったのは江戸時代以降のことで、それまでは、「そばがき」にして食べるのが普通であった。そばがきは、そば粉を湯で練り混ぜ、団子状にしたものである。農村部では、戦前頃まで日常食として作られ、ハレ食にもなった。

日光市の栗山地区など山間部では、残り飯に蕪(かぶ)を入れ、さらに煮込んだところにそば粉入れてかき混ぜた「そばねり」も作られていた。また、茹でたじゃがいもをつぶしたものにそば粉を混ぜた「じゃがいも餅(そば餅)」、とちのこ(栃の実からとった粉)とそば粉を練り合わせた「栃餅」なども日常食として重要であった。

写真左側がそばがき(鹿沼市)

栃木のユニークなそば料理

今日、佐野市では「大根そば」が名物となっている。そばと千切りにした大根を一緒に茹でたもので、「かさまし」(かて・増量のこと)という庶民の知恵から生まれた料理であるが、一度食べると大根のしゃきしゃき感がくせになる。一方、鹿沼市の「ニラそば」は、ニラの生産地だからこそ味わえる一品で、そばとニラの風味を同時に楽しむことができる。他に、猪の肉を汁の具材とした那珂川町の「ししそば」、那須烏山市や日光市、那須町で売り出し中の「寒晒しそば」もおすすめだ。

大根そば(佐野市)
ニラそば(鹿沼市)

そばとせめぎ合う栃木のうどん文化

余談ではあるが、栃木県は小麦の生産も盛んである。そのため、耳うどん(佐野市)、氏家うどん(さくら市)、小山開運うどん(小山市)など、ご当地うどんも見られる。うどん文化圏とそば文化圏のせめぎ合いも栃木県の特徴の一つであろう。1枚のザルにうどんとそばを相盛りで出す店もあるので、それぞれのよさを一度に味わってみるのもよいだろう。

栃木県の秋は、そばの豊かな香りに包まれる時期。ぜひ、この季節ならではの味覚を堪能しに訪れてみてはいかがだろうか。


篠﨑 茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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