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文化と歴史

間々田(ままだ)のジャガマイタ

掲載日: 文化と歴史
間々田(ままだ)のジャガマイタ
間々田のジャガマイタ(写真は2016年撮影)

間々田のジャガマイタは、子どもが主役の行事

「ジャーガマイタ ジャガマイタ 4月8日のジャガマイタ」。毎年5月5日になると、小山市の間々田地区では子どもたちの元気なかけ声がこだまする。

間々田のジャガマイタは、子どもが主役の行事である。その起源は定かではないが、釈迦生誕を祝って八大竜王が竜水を降らせた故事によるものといわれる。また、今から150年ほど前にこの地方をおそった干ばつと疫病の流行を憂いた龍昌寺(りゅうしょうじ)の法隆東林が始めたとする説も有力である。

昭和の半ばごろまでは、お釈迦様の誕生日である旧暦4月8日に行っていた。かけ声にある4月8日はその名残である。平成31(2019)年には栃木県としては5例目となる国の重要無形民俗文化財に指定された。

蛇体作りの様子。各町内が工夫を凝らして蛇を作る

蛇を作って練り歩くジャガマイタ

ジャガマイタは、間々田地区の7つの町内が、それぞれ長さ15メートルほどの蛇体を作って町内を練り歩く祭りである。孟宗竹(もうそうちく)の割竹に稲藁を重ねて縄で巻きつけた芯に、装飾としてのシダの葉を付けたもので、頭には二股に分かれた木を突き立てることで角とし、尻にはシリケンと呼ぶ木製の板をくくりつける。そして、金紙や銀紙を丸めて目玉とし、割竹を編み込んで作ったザルを口、アワビの貝殻を耳に見立てる。

町内を練り歩く蛇

祭の見せ場!蛇の「水のみ」

祭りの当日、まず間々田地区の鎮守である間々田八幡宮に蛇体を運ぶ。これを「蛇よせ」という。そこでお祓いを受けてから、境内にある池に立ち寄って「水飲み」を行う。蛇体の口を池に入れて水を飲ませる儀式であるが、担ぎ手が勇猛果敢に池に飛び込んで蛇を泳がせる町も見られる。ジャガマイタで一番の見せ場であり、池の周りには多くの観客が集まって、それを見守る。

お祓いを受ける蛇。間々田地区の7つの町内で作られた蛇は、間々田八幡宮の神主のお祓いを受ける
水のみ。間々田のジャガマイタ一番の見せ場である。この後、蛇はそれぞれの町内に戻る

蛇もみで家内安全、魔除けを願う

その後、それぞれの町に戻った蛇は、人々に担がれて町内を練り歩く。なかでも旧家、家を新築した人、子どもが生まれた家、御祝儀をはずんでくれた家では、蛇もみを行う。蛇もみとは、蛇を上下にゆすることであるが、これを行うと家内安全、魔除けになるという。また、赤ん坊を抱いた人の前でも蛇もみを行う。

家の玄関に蛇の頭を入れて魔除けとする

戸口にヨモギを飾って五穀豊穣、疫病退散

4月8日は、山の神が平地に下って田の神になる日ともいわれる。地域によっては、フジやツツジを竿の先に結んで高く掲げ、神の依代とした。この日、間々田地区にもフジ蔓やヨモギを戸口に飾る家があり、蛇体にフジの蔓を巻いた時代もあった。

現在、間々田のジャガマイタは、子どもの日に行う娯楽としての要素が強いが、本来は、田植えを前に水神の象徴としての蛇体を作り、五穀豊穣、風雨順調、疫病退散などの願いを込めた祭りであったに違いない。コロナ禍により、2年続けての中止となるが、来年こそは大きな蛇に疫病退散を願いたい。

家の戸口に飾られたフジ蔓やヨモギ

篠﨑茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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