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文化と歴史

一年で最も美しい月「中秋の名月」。秋の夜長に楽しもう

掲載日: 文化と歴史
一年で最も美しい月「中秋の名月」。秋の夜長に楽しもう

中秋の名月と言えば十五夜団子

間もなく十五夜である。なかでも旧暦8月15日の月は中秋の名月と呼ばれ、一年で最も美しい月が見える日といわれる。月を愛でる日としても知られ、令和6年は9月17日がこれにあたる。

各家では、縁側などに卓袱台を置いて、そこに団子やけんちん汁、大根、里芋、さつまいもなど秋の収穫物を供えた。この日に付き物のススキは、稲の穂に見立てたもので、5本飾るのが習わしである。年によって日が変わるからわかりにくいとの声も聞かれるが、十五夜は月の満ち欠けを見て暦を刻んでいた時代(太陽太陰暦)の名残である。

十五夜の供え物

栃木の十五夜団子とダンゴツキの風習

十五夜のご馳走といえば団子である。この日が近くなると、和菓子屋やスーパーなどの店頭には月見団子が並ぶ。しかし、本来は各家庭で作っていた。栃木県では、1升の米粉に熱湯を注いでこねたものを15個に丸める家が多い。これは大きさにして4、5センチほど、普通に見かける串団子などと比べ、かなりのボリュームがある団子である。

この日は、供え物を盗んでも良い日とされた。これを十五夜の物盗みという。特に団子が標的になったので、ダンゴツキなどとも呼ばれている。子どもたちの楽しみの一つで、多くは家人の目を盗んで失敬するが、竹竿の先に釣り針や魚取りのヤスをしかけ、団子を盗み取った強者もいた。

このダンゴツキ、教育上望ましくないとかの理由で現代社会では死語になっているようだが、この場合の子どもは神様の使者であって、秋の収穫物を皆に分け与えるという意味があった。そのため、盗まれた家でもこれを見て見ぬふりをし、そればかりか供物が盗まれると縁起がよいなどと喜ぶ人さえいた。

十五夜の団子は15個に丸め供えた

十三夜と日本独自の風習

同じく月を愛でる日として十三夜がある。こちらは旧暦9月13日(令和6年は10月15日)。十五夜の芋名月に対して、豆名月とか栗名月とも呼ばれている。十五夜が中国伝来の風習であるのに対して、十三夜は日本で始まった風習である。

少し欠けた月にも「美」を感じるところが日本人らしい。この日も団子を作って秋の収穫物を供え、その実りに感謝した。 なお、十五夜に月見をしたら、十三夜も月見をするものだといわれる。どちらか一方の月しか見ないことを「片月見」あるいは「片見月」といって、縁起の悪いこととされた。

猛暑でうんざりする日が続いているが、季節は確実に秋に近づいている。農家であれば、秋の収穫期にさしかかり、これまでの苦労が報われる頃。秋の澄み切った空気のもと、月を見上げて心を癒やすのもよい。

十五夜にも十三夜にも欠かせないススキ

篠﨑 茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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