下野市出身。2003年から「ANT」として、アクセサリーや衣類などの布作品を制作。現在、南宇都宮にてアトリエ兼ショップを構え、販売やスタイリングといった業務も兼任。2019年国内外の古着や小物などを扱う「grasshopper」を設立。大人のヴィンテージ・ファッションの楽しみ方を提案している。
https://antnokakera.stores.jp
栃木発!アパレルブランド「ANT」
ポップな色使いのループアクセサリーやインパクトのある総柄のコート、布地に革を取り入れたエプロン。アパレルブランド「ANT」として活躍する布作家の倉林真知子さんの作品には、それぞれに“いきいき”とした魅力があります。それはまるで、ものづくりの楽しさを知る倉林さんの生き方そのもののよう。アトリエで一人、コツコツと作業する真剣な眼差しの先には、一体何がみえているのでしょう。次から次へと、立ち止まることなくイメージをかたちにしていく倉林さんに、その思いをお伺いしました。
自分の世界観を表現したい!
現在、南宇都宮にあるシェアスペースにアトリエ兼ショップ「ANT atelier」を構える倉林さんですが、活動を始めたのは、今から17年前のこと。その経緯を尋ねてみると、意外にも「もともと洋服づくりに興味をもっていたわけではなかったんです」。こんな言葉が返ってきました。
下野市出身の倉林さんですが、専門学校を卒業すると一度地元に戻るものの、再び上京し都内のアパレル店などで働いていました。当時は、ディスプレイやコーディネートの仕事で思考を凝らすことが、何よりも楽しかったといいます。市販で出回っている衣料品や装飾品でコーディネートできるなら、それでもいい。でも、自分がイメージしたその世界観を表現するために、足りないものがでてきてしまったら…。そうしたら、自分でつくればいい!そうひらめいたのが「ANT」のはじまりとなったそうです。
アトリエでは、服やバッグ小物、アクセサリーをオーダーで制作。アーティストの衣装制作やスタイリングもこなす倉林さん。洋服は好きだけれど、服作りはしたことがなかった倉林さんは、何をつくるにしても独学です。なければ、つくる。その思いだけで、布を選び、切り、縫う。出来上がりまでのプロセスは、「ANT」として長く活動を続けている今も変わらず、一番の楽しみとなっていると倉林さんは話します。
「はじめから目に見えているものは、もう完成しているものだから、そこからの創造は生まれないじゃないですか。私は自分の頭のなかで想像したこの世界を、自分が見てみたいって思った瞬間から、もう『やりたい!』がとまらなくなっちゃうんです。ブレーキがきかない(笑)」
みんなで楽しめるイベントを提供
2005年、宇都宮市にアトリエを構えた倉林さん。その後、子育てのため住居とアトリエをさくら市へ移転。雑貨店で作品を販売したり、イベントに出店したりと徐々に地元での活躍の場を広げていきました。
また、自然のなかでのびのびと遊ぶ子どもの姿からインスピレーションを得て、自宅の庭で“庭でものづくり”をテーマにしたイベントを企画。「にわのひ」という「ANT」のものづくりをいかした、親子で楽しめる空間を提供しました。そのイベントは大盛況で、翌年には県内外の作家さんに声をかけ、ワークショップや音楽、飲食を楽しめる「もりのひ」というイベントも行うなど、倉林さんならではの発想力で、子どもから大人まで、そして作り手と買い手も、その場にいるみんなが楽しめる、これまでになかったユニークな催しを実現してきました。
新しい表現、展開を楽しむ
「私は布作品に限らず、自分が思い描いたものをつくることが好きなだけであって、プロの『職人』ではないと思っているんですよ。だからイベントや展示会のためにその空間をつくる。アーティストのコーディネートの仕事も同じです。その人の魅力を引き出すものをつくる。空間や人を通じて『ANT』の世界観を表現すること。ただそれが好きなんです」
ないものをつくることや新しい展開への不安はありませんか?そう、質問を投げかけると倉林さんは即座にこう答えてくれました。「もう先はみえているから、不安なんかないですよ」
作品作りだけでなく、スタイリングや縫製教室も行う倉林さん。ただいまのブームは、ネクタイ遊びなんだとか。「ネクタイを巻くだけでも無限。どんなふうに巻けるか、身に付けるか。そんなことを楽しんでいます」
子どものように無邪気に笑う倉林さんがみせてくれるその世界は、きっと明るく楽しいものに違いない。倉林さんの瞳はもう、次の新しい世界を見据えているのでした。