三重県に生まれる。同志社大学で環境学を学び、卒業後、研修を経て有機農業で独立。現在は壬生で年間約70種類の野菜を栽培する。農薬・化学肥料を一切使わずに有機肥料のみで野菜を育てるために、日々、虫や雑草と奮闘している。
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ようやく緊急事態宣言が解除され、学校が始まり、元の生活に戻り始めた今日この頃。皆さんいかがお過ごしでしょうか? そろそろ子どもをどこかに連れて行ってあげたい気もしますが、ここで油断して感染が広がってしまっては元の木阿弥。まだまだ、油断はせずに気を引き締めていきたいなと思っています。
さて、今回は前回に引き続き品種のお話です。今回はうちがどんな選び方をしているかというお話です。うちは基本的においしい野菜を食べたいと思っているのでおいしい品種を選びたいと思っています。ではそのおいしい品種の見分け方とはなんでしょうか?
オープンファームで種苗会社に話を聞く
そのヒントは種苗会社さんのオープンファームで教えてもらいました。オープンファームとは種苗会社さんの展示会のようなものです。農場には大根、人参、キャベツ、ほうれん草、小松菜など、畑ごとにさまざまな野菜が栽培されていて、畝(うね)ごとに違う品種が栽培されています。そしてその野菜を試食できたり、それぞれの野菜の栽培担当者に直接お話を聞くことができたりします。
そこで担当者の方においしい品種の見分け方を聞いたところ、カタログに「直売所向け」と書かれている品種がオススメだ、と教えてくれました。カタログでそのような表示を見たことがありましたし、直売所で買うお客さんはおいしい農家さんを選んで買うイメージを持っていたので、なんだか予想通りの答えが返って来たな、と少しがっかりしました。しかしその理由を聞くと、それはすごく納得のいくものでした。
おいしい品種の条件
その理由とは、おいしい野菜の品種の条件として、基本的に「やわらかい野菜」ということが挙げられるそうです。しかしながら、やわらかい野菜は長距離輸送には向きません。人参や大根、そしてキャベツなど、収穫された野菜が袋詰め、箱詰めをされ、それがトラックに乗り、市場、そしてスーパーと、積み下ろしを繰り返しながら長距離を移動するとなると、やわらかいと傷みがでてしまいます。そのため、品種改良が重ねられます。本来はやわらかくおいしい品種を、輸送に耐えられるように硬く改良をしていった結果、おいしさが損なわれてしまうのだそうです。
それと、もう一つ。専業で小松菜やホウレン草を栽培している農家さんは、収穫に時間をかけたくありません。そのため収穫しやすいように葉っぱが折れにくく、ピンとよく立つ立性の高い品種が人気です。野菜を硬くし品種改良していくと、おいしさが損なわれてしまうそうです。
「直売所向け」の表示が一つの指標
というわけで、品種を選ぶときに「直売所向け」と書かれているかどうかは一つの指標にしています。
プロの方に教わってなるほどと思ったお話でしたが、面白かったのはだいたいおいしい品種は昔からある品種だそうです。その味を保ったまま輸送に強く病気に強い品種というものがどうしてもできなくて、それが課題でそのために日々研究しているとのことでした。もし種を選ぶ機会があればそんな話を思い出しつつ、「直売所向け」を選んでみてください。