宇都宮市で雑貨店を経営。土・日・月曜日の3日間のみ、卵やバター、生クリームなどの乳製品や白砂糖を使わない、手作りのマクロビオティックの焼き菓子を製造販売している。
https://ameblo.jp/rei2807
マクロビオティックの手作りの焼き菓子
無農薬・自然農法の穀物や野菜を中心とした食事法「マクロビオティック」。食物アレルギーを持っている人や、健康に気を付けている人を中心に取り入れられているこの食事法をベースに、手作りの焼き菓子を製造・販売をしているのが、宇都宮市で雑貨店を営む吉澤利恵さんです。吉澤さんのマクロビ菓子が店に並ぶのは週に3日だけ。それでも、吉澤さんの作る菓子を楽しみに、常連さんたちが毎週のように店に足を運んでは、うれしそうに菓子を選んでいきます。
子どもに健やかに育ってほしい
吉澤さんの雑貨店「Rei*」があるのは、宇都宮市中心街近くの細い路地。2012年にオープンしたこちらの店では、家具職人のご主人が作る家具と雑貨、ハンドメイド作家による作品などを取り揃えています。店内の一部を菓子製造ができるように改修・改装し、マクロビ菓子を販売しはじめたのが2015年。菓子の販売は、吉澤さんの以前からの夢だったそうです。
「お菓子作りはもともと大好きで、小さい頃からよく作っていました。実際に自分が作ってみると、こんなに砂糖が入っているんだとか、いろいろ気にはなっていたんです。そうして子どもを授かったのを機に、お菓子だけでなく食事にも気をつけるようになりました」
お腹が大きくなるにつれ、生まれてくるわが子への愛情が深まっていった吉澤さんは、母親学級に参加。離乳食講座で幼少期の子どもの食事が、その後の成長や発達に大きく関わってくることを知り、こう決意します。
「子どもの食事は全部手作りしてあげよう!」健やかに育ってほしい―。母親としてわが子への思いを手作りというかたちで伝えたいと決めた吉澤さん。それが、吉澤さんの研究心に灯をともすきっかけとなったのです。
自分が納得する素材だけを使って
素材や調理法にこだわる菓子店は数多くあります。そのなかでも吉澤さんのこだわりは「そこまで?!」と、思ってしまうほどの徹底ぶり。焼き菓子で使う有機栽培のイチゴが不作で手に入らなかった年は、たとえ毎年心待ちにしているリピーターがいても、代用のものを使って作ることはしません。また、本来はもっと日持ちはするものでも、味わいが落ちる前に食べてもらいたいと、賞味期限も短めに設定しています。
「“国産”とうたわれていても、農薬を使用してるものもあります。小麦や卵、乳製品などの動物性食材を使わず、無農薬・自然農法の食材だけを使う完全なマクロビ菓子を作るには、使用する食材がどこの誰がどんなふうに生産し、安全なものであるかを私がわかっていないと、お客さんに『どうぞ』と言うことができません。お客さんのなかには重度の食物アレルギーを持った人もいらっしゃいます。そういう方々のためにもたとえ間口が狭くても、私はみなさんが安心して食べられるものしか作りたくないんです」
本当においしいものを作りたい
吉澤さんはすべて自らが厳選したオーガニック食材を使用するので、菓子の価格は決して安くはありません。店に並べた当初は、売れ残る日も度々あったそうです。ときには「マクロビはおいしくない」「パサパサしている」などと言われたことも。吉澤さんはその度に、物足りないと思われがちな味わいも十分に満足してもらえるよう、改良を重ね、独自にレシピを開発し続けました。そしてその努力の甲斐あって「身体にやさしくおいしいマクロビ菓子」とたくさんのお客さんに認知され、今に辿り着いたのです。
安心と笑顔を届けるためのお手伝い
マクロビ菓子のきっかけをくれたお子さんは現在、中学生になりました。今でも吉澤さんが菓子を作るたびに、喜んで食べてくれるといいます。もちろん、まったくの病気知らずの健康体だそう。
「マクロビ菓子はご家庭でも作れなくはないですが、ここまでの材料をそろえるのはかなり大変なこと。ですから、私は忙しいママさんやアレルギーで苦しまれている方など、みなさんのお手伝いができればいいなって思っています。本当に必要な方がちょっと買いに来てくれて、笑顔で帰る姿を見ることがうれしいんです」
吉澤さんの思いに共感をもって、喜びを分かち合える特別なマクロビ菓子。たしかに、それを必要としている人は多くはないかもしれません。しかし「安心できる菓子を食べたい」「食事の制限がある」そんな人たちにとって吉澤さんの作るマクロビ菓子は、日々の暮らしに安心と笑顔をもたらす、ひとすじの光のような存在になっているのです。