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文化と歴史

伝えていきたい郷土芸能「獅子舞」

掲載日: 文化と歴史
伝えていきたい郷土芸能「獅子舞」

魅力あふれる芸能「獅子舞」

獅子舞(ししまい)は、獅子や虎、竜、鹿などを象った頭(かしら)を被って舞い踊る芸能である。その歴史は、紀元前3世紀のインドに遡ることができ、中国や朝鮮半島を経て、日本に伝わったものと考えられている。

大きく分けると1人が1頭の獅子となる「一人立ち」と、2人以上が1頭の獅子となる「二人立ち」に分類され、このうち前者は東日本で多く見られるが、2頭から12頭ほどの獅子が笛や太鼓に合わせて舞う姿は、じつに圧巻である。後者は西日本を中心として全国に分布する。なかでも伊勢太神楽(いせだいかぐら)に代表される太神楽系の獅子舞は、正月の風物詩としても知られている。また、北陸地方には、胴幕に何人もの人が入って1頭の獅子を演じる百足獅子が見られる。獅子舞は、地域色豊かな魅力あふれる芸能である

天下一関白神獅子舞(てんかいちかんぱくかみししまい・県指定無形民俗文化財)(2009年・宇都宮市関白町)7月7日(現在は8月第1土曜日)に宇都宮市関白町にある関白山神社で行う。この獅子舞の由来を示すものに「関白獅子縁起」があり、江戸時代中期から明治時代にかけて県内各地に伝授された。獅子舞を神社に奉納する前に、衣装をまとい隊列を作って地区内を練り歩いた。これを風流(ふりゅう)という。

栃木では「一人立ち三匹獅子舞」が分布

栃木県には、「一人立ち三匹獅子舞」が広く分布する。一人立ちの3頭の獅子が、腹に付けた太鼓を叩きながら、笛に合わせて舞い踊るもので、多くは、雄2頭(太夫獅子・雄獅子)と雌1頭(雌獅子)からなる。代表的な演目として「芝(雌獅子)隠し」、「四方固め」、「平庭」、「弓くぐり」などがあるが、2頭の雄獅子が雌獅子をめぐって葛藤する「芝隠し」は、人間味にあふれるストーリーとして知られている。3頭の獅子を中心に、庭(獅子舞を演じる場)の四隅を固める花籠やユーモラスな道化や鬼、フクベなども登場し、さらには笛や太鼓の囃子方(はやしかた)や「ささら」が場を盛り上げることで人々を楽しませた。

天下一関白流御神獅子舞(てんかいちかんぱくりゅうおんかみししまい・市指定無形民俗文化財)(2012年・宇都宮市中里町)宇都宮市中里町で行われている獅子舞で、中里西組獅子舞ともいう。例年8月15日、中里地区の鎮守白山神社の例大祭の日に自治会の公民館などで行う。江戸時代に隣村の関白より伝授されたもので「関白流」を名乗る。鬼を賊に見立てて退治する「ニーゴの舞(鬼退治)」が見られるのが特徴である。

悪疫を鎮める獅子頭

現在、県内には60ほどの地域で獅子舞が伝承されているが、これらは江戸時代から明治時代にかけて各地に広まったようだ。なかでも獅子頭は、悪疫を鎮めるものとして神聖視されたことから、無病息災、五穀豊穣、家内安全の願いを込めて、盆や台風が襲来する時期として恐れられていた八朔(旧暦8月1日)、秋の収穫期になると、寺や神社などに獅子舞を奉納した。また、道路や橋の開通式や施設の開所式などに招待されることもある。

天下一関白流獅子舞(市指定無形民俗文化財)(2007年・宇都宮市逆面町)逆面の獅子舞とも呼ばれ、例年8月15日と八朔(旧暦8月1日。現在は8月下旬)に宇都宮市逆面町の白山神社に奉納される。疫病退散、五穀豊作、風雨順調などを祈念して行う。関白より伝授された獅子舞の一つで、写真は「弓くぐり」。雄獅子が弓と弦の間をくぐる場面が見所である。

伝えていきたい獅子舞の伝統

獅子舞は、真夏の炎天下に、しかも中腰の態勢で行うことから、かなりの体力を必要とする。地区の若者にとって、獅子を演じること、なかでも雄獅子に抜擢されることは、大変な名誉とされた。しかし、近年は過疎化と少子高齢化によって、獅子の担い手がなく、70代以上の人が獅子頭を被ることも珍しくない。そして、舞や囃子の継承も難しくなりつつある。しかし、地域の人々にとって、獅子舞は心の拠り所である。獅子舞に興味や関心が高まることで、地域が元気になることを願わずにはいられない。

河井のささら(県指定無形民俗文化財)(2008年・茂木町河井)旧暦8月15日(現在は旧暦8月15日の最も近い日曜日)に茂木町河井の八幡宮と長寿寺で行う。「ささら」とは、竹の先を割って作った楽器で、鋸の歯のような刻みをつけた目の上を棒でこすると音が出る。地区内の小学生以下の子どもが、獅子、フクベ、ささら役などに分かれて舞う。写真は、八幡宮で行われた獅子舞の様子である。
川俣の獅子舞(市指定無形民俗文化財)(2010年・日光市川俣)旧暦7月23日(現在は8月下旬)から始まる祭礼の中で行う。地区内の若者(若衆組)が、瀧尾神社、集会所、愛宕山、西光寺などで、獅子舞を披露する。舞は朋輩(年長者)の厳しい指導の下、若衆に伝授される。写真は、愛宕山で行われた獅子舞の様子である。
今年は、新型コロナウィルス感染症の影響で、多くの郷土芸能が中止または延期となっています。保存団体や教育委員会、ホームページ等で実施の有無を確認した上で、お出かけください。獅子舞をWebで公開している地域もあります。興味を持った方はそちらもご覧ください。

篠﨑 茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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