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栃木の伝統工芸、線香

掲載日: 文化と歴史
栃木の伝統工芸、線香

栃木県の伝統工芸品「杉線香」「栃木の線香」

盆などの仏事に欠かせない線香は、少なくとも室町時代には日本に伝わり、広く使用されるようになったのは江戸時代の初期頃になってからといわれる。栃木県は、大阪府、兵庫県とならぶ線香の生産地として知られ、なかでも杉の葉の粉末から作られる杉線香は全国有数の生産量を誇っている。このうち日光市今市で作られる「杉線香」と栃木市の「栃木の線香」は、栃木県の伝統工芸品となっている。

今市の杉線香

杉線香の製造法

杉線香の製造は、粉作りと線香作りとに分かれ、前者はそれを「粉屋」、後者は「線香屋」が担う。原料である杉の葉の採集は、杉の伐採時期でもある10月から翌年3月頃にかけて行い、小屋の中で3ヶ月から4ヶ月ほど自然乾燥させてから枝から葉をもぎ取って、葉だけの状態にする。それらを庭先に広げて天日で干し、十分に乾燥したら杵で搗いて粉にする。

その粉を購入して、線香に仕上げるのが線香屋の仕事である。線香は、原料の粉砕と攪拌、練り、盆切り、並べ、胴切り、乾燥などの工程を経て作られる。杉の粉にしな粉や着色料、そして沸騰した湯を混ぜて練ったものを機械に入れて押し出すと、ところてん式に線香が出てくるので、これを盆板で受け取り、さらに干板に並べたものを規定の長さに切りそろえていく。その後小屋で1週間ほど自然乾燥させたものを結束し、箱に詰めると完成となる。単純作業のようにも思えるが、線香は温度や湿度など環境が悪いと変形してしまうので、熟練の技が欠かせない。

杉の葉の製粉に水車を利用

今市の杉線香は、越後国三島郡片貝村(現新潟県小千谷市)出身の初代安達繁七(1841~1900)によって始められた。文久元年(1861)の創業と伝えられている。日光杉並木を始めとする豊かな杉林に目をつけ、線香の製造を思いついたという。杉の葉の製粉は水車が利用された。扇状地を流れる小河川が数多く存在していたことも今市で線香業が発展した理由であろう。こうした自然の恵みが今市の線香業を育んだ。

現在の浅田水車 30年ほど前には今市のあちこちで水車小屋が見られた。

今市の線香業を支え、1950年代には70基以上もあったという水車は、後継者不足や高齢化、生産効率の低さなど複数の要因が重なり、年とともに数を減らしていく。そして、最後まで残った日光市大室の通称「浅田水車」も関東東北豪雨(2015年)がきっかけとなり、その幕を閉じた。

昔ながらの地元・今市の天然素材で作られた香り豊かな杉線香はやや影をひそめているが、今日では杉線香で培った技術を生かし、より付加価値が高くて高級感の漂う「匂線香」や「香」を開発することで新たな活路を見いだしている。

栃木市の店「蘭と月」の香(月の香)。栃木市の線香工場で作られている。

篠﨑茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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