三重県に生まれる。同志社大学で環境学を学び、卒業後、研修を経て有機農業で独立。現在は壬生で年間約70種類の野菜を栽培する。農薬・化学肥料を一切使わずに有機肥料のみで野菜を育てるために、日々、虫や雑草と奮闘している。
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端境期(はざかいき)とは野菜が少なくなる時期
今、畑は端境期(はざかいき)と呼ばれる時期です。端境期とは、簡単に言えば野菜が少なくなる時期です。通年で多品目の野菜を育てているわが家ですが、3~4月は端境期になってしまいます。この時期は徐々に暖かくなってきて、秋に種をまいた野菜は大きくなり過ぎたり花芽を出したりして食べられなくなります。また、暖かくなることによって貯蔵してあった野菜たちにもいたみがでてきます。
一方、冬の寒さが落ちついてから種を撒いた野菜は、まだまだ成長途中で小さくて収獲までには時間がかかります。このような理由が重なって野菜が少なくなってしまいます。
施設栽培、産地リレーで通年野菜が食べられる
「端境期」なんて言葉初めて聞いた、と思う方もいらっしゃるかもしれません。私も農業を始めてから初めて知りました。今のスーパーには、いつ行ってもたくさんの野菜が並んでいて、寒い冬であってもトマトやナスがあったり、暑い夏でもキャベツやレタスがあったり、端境期を意識することは難しいと思います。
それを可能にしているものの一つに施設栽培があります。ビニールハウスやガラスハウスで加温することによって、寒い冬でもナス・トマト・きゅうりなどが栽培することが可能になっています。
さらには産地リレーと呼ばれるものもそれを可能にしています。今、栃木県は野菜の少ない時期ですが、温暖な九州の方から順に、愛知県産や千葉県産、さらには気温の低い東北地方や長野などの高原などから野菜が届くようになります。このように地方から地方へと上手にバトンタッチされていくようにして安定して通年野菜を供給できるようにする仕組みを産地リレーといいます。
このようにして端境期でもいろんな種類の野菜を買うことができます。ですが、個人的には旬の地場野菜を選ぶのがおすすめです。わが家は基本的に野菜を買いません。冬は、旬のほうれんそう、小松菜、大根、人参などを毎日のように食べていました。正直なところ、飽きる時もあります。さらには端境期で野菜が少なくなったりします。
地場野菜を食べよう!
しかし、端境期だからこそ、いろいろな食べ方を工夫して野菜のおいしさを味わうこともできます。たとえば、今の時期なら菜の花。菜の花はおひたし、あえ物、いため物、どんな調理法でもおいしく食べられます。
春の訪れを感じられる野菜が食卓に並ぶのは嬉しいことです。菜の花はとくにそうですが、他の野菜でも「初物」に出会うと嬉しいものです。スーパーで野菜を買っていると、季節外の野菜でも並んでいるので、なかなか「初物」を感じられないかもしれません。
しかし、旬の地場野菜があったらぜひ手に取ってほしいものです。野菜は鮮度が大事なので、他の産地野菜よりも、地場の野菜はずっとおいしいと思います。また、旬の地場野菜には、輸送の手間や輸送コスト(燃料)がかかっていないため、お財布にも地球にも優しかったりします。
季節の地場野菜は、直売所やスーパーの地場野菜コーナーなどで購入できます。同じ野菜を食べ続けることは、飽きるように思いますが、案外、同じ野菜でもちょっと調理法を変えたり、味を変えるだけで毎日、食べられます。ぜひ、旬の地場野菜をじっくりと味わってみてください。