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干瓢(かんぴょう)王国栃木県!なんと全国生産量99.4%!

掲載日: 文化と歴史
干瓢(かんぴょう)王国栃木県!なんと全国生産量99.4%!

栃木県特産の干瓢を用いた郷土料理

干瓢は栃木県を代表する農作物である。少なくとも明治時代には、干瓢の産地として全国にその名を馳せた。農林水産省の地域特産野菜生産状況調査によれば、令和4年度の栃木県の干瓢の生産量は164t、全国の生産量の99.4%を占める。主産地は、県の南部の小山市や下野市、壬生町、上三川町などで、庭先に簾のように干された干瓢は、この地域の夏の風物詩となっている。

庭先に干した干瓢

料理の名脇役!?干瓢の郷土料理

干瓢は、ウリ科のユウガオの実の果肉を紐状に剥いて乾燥させたものである。どのような味付けにもなじむことから、料理の脇役として重宝された。なかでも干瓢の煮しめや海苔巻き寿司、和え物などが、よく知られている。煮しめは、里芋、大根、牛蒡、椎茸、こんにゃくなどを醤油や砂糖、みりんなどで味がしみるまで煮付けたものである。そこに水で戻した干瓢を入れると食感が増して、味が引き立つ。そして、砂糖や醤油で煮詰めた干瓢を具材とした海苔巻き寿司が「干瓢巻き」である。

最近は鉄火巻きや納豆巻きに押されているが、一昔前まで、海苔巻き寿司と言えば干瓢巻きが定番であった。これと俵型の稲荷を干瓢で縛った稲荷寿司は、昭和の時代の運動会や遠足の御馳走であった。普通のご飯に比べると傷みにくく、また酢飯と甘塩っぱい干瓢との組み合わせは、疲れた体を奮い立たせてくれた。とはいえ干瓢の下ごしらえは容易ではない。前日から手間暇かけて干瓢を煮る母の姿は、遠い昔の日の思い出である。

稲荷寿司
干瓢巻き

干瓢料理はハレの日のご馳走

干瓢は祭りや農家の休日などに作られる「五目飯」にも欠かせない。あわせて作られる「干瓢の卵とじ」は、溶き卵につけた干瓢を、火加減に注意しながら汁に入れたものである。これは、醤油仕立てのほか味噌味も美味しい。また、細かく切った干瓢にきゅうり、人参、油揚げなど加え、ごま酢で和えた「干瓢のごま酢和え」は、栃木県の郷土料理の一つである。これら干瓢を使った料理はハレの日に食べられることが多いが、生産農家では、売り物にはならない長さの短い干瓢などを普段の食事に使うこともある。

五目飯
干瓢の卵とじ

栄養価の高さから再評価されつつある干瓢

近年、食生活の変化もあってか、干瓢料理に接する機会は少なくなっている。今や干瓢の下ごしらえも難易度が高い。干瓢を前にどうしたものかと途方に暮れる人も多いだろう。しかし、食物繊維が豊富で、カリウムやカルシウムを多く含む干瓢は、再評価されている。また、乾物のため長期保存も可能。最近では干瓢の粉を用いた菓子や「かみなり汁」など新しいレシピも考案されている。栃木の特産物である干瓢をぜひ見直していただきたい。

『料理の画像: 農林水産省Webサイト うちの郷土料理より』
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/area/tochigi.html


篠﨑 茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。宇都宮大学大学院教育学研究科社会科教育専修修了。栃木県立足利商業高等学校、同喜連川高等学校の教諭を経て、1999年より栃木県立博物館勤務。民俗研究、とくに生活文化や祭り、芸能等を専門とし、企画展を担当。著書に『栃木民俗探訪』(下野新聞社)などがある。

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