とちぎの魅力を伝えたい!ここが穴場!観光・地域情報

Special feature

つながりの中で、暮らしていく

「日本で最も美しい村」として知られ、里山の原風景が広がる那珂川町・小砂地区。江戸時代末期から続く「藤田製陶所」では、代々受け継がれてきた小砂焼の器づくりが、今も暮らしのすぐそばにあります。この土地で焼き物を続けてきた六代目の藤田眞一さん。自然の中で育ち、仲間たちと地域の行事を受け継ぐ次期七代目・悠平さん。結婚を機に那珂川町へ移り住み、人と人をつなぐ活動を続けてきた峰子さん。

藤田家の歩みをたどると、見えてきたのは、人と人、地域、そして次の世代へと続いていく、さまざまな“つながり”。そこには、この町ならではのあたたかな暮らしがありました。


「ここで育って良かったな」と思える町で

藤田製陶所 次期七代目/藤田悠平さん

子どものころは、とにかく外で遊んでいました。山へ行ったり、川へ行ったり。毎日自然の中で過ごしていましたね。今思うと、焦らされることもなく、自然なまま育ってこられた環境だったと思います。小さい頃からの仲間とは、大人になった今もつながっています。

京都の大学で陶芸を学ぶため、この地を離れ暮らしていたころ、東日本大震災で登り窯が崩れてしまったんです。壊れた窯や器を目の当たりにしたとき「継ぐぞ」というより、自分にできることをやろうと思いました。

地元に戻った今は、制作のほか陶芸体験も担当。国内外からたくさんの人が来てくださるので、みなさんに、この土地のことも一緒に伝えていけたらと思っています。最近は、これまでの小砂焼にはあまりなかった淡い色の器も作るようになりました。「小砂焼ってこういう感じもあるんだね」と言っていただけることも増えました。

伝統を大切にしながら、自分らしい表現も少しずつ加えていけたらと思っています。地域の餅つきイベントも、どこか同じような感覚なのかもしれません。もともとは地域で続いてきた行事でしたが、高齢化で難しくなり、仲間たちと自然な流れで始まりました。回数を重ねるごとに、小さかった子どもたちが、餅つきを手伝ったり、お餅を配ったりするようになって。自分が子どもの頃に見ていた景色が、今も続いていることに「ここで育って良かったな」って、あらためて思いますね。

これから先も、自分にできることを続けていけたらいいですね。子どもたちにも、いつの日か同じように感じてもらえたらうれしいです。


この土と暮らしの中で、小砂焼をつないでいく

藤田製陶所 代表/藤田眞一さん

この土地で焼き物を続けていると、やっぱり“土”なんだなと思うんです。水戸藩の頃、この土地で焼き物に使える土が見つかったことから始まったと聞いています。そう考えると、小砂焼って“小砂そのもの”なんですよね。うちは江戸時代末期から続いていて、私で六代目となります。ただ、「伝統を守る」という感覚だけではないんですよね。もちろん続いてきたものは大切です。でも、同じことを繰り返すだけではなく、その時代に合ったかたちでつないでいくことも必要なのではないでしょうか。

よく「伝統工芸」と言われますが、伝統というものは、その土地の暮らしから生まれるものだと思うんです。小砂の空気の中で暮らし、小砂の土にふれているからこそ生まれるものがある。だから、私自身も結局は「ここにいるから、こういうものを作っているんだ」というところに行き着くんですね。

工房と暮らしが近いので、子どもたちも自然と焼き物のある環境で育ちました。息子には「継いでほしい」と言ったことはないんですけど、日々の暮らしの中で、自然と見て育った部分はあるのかもしれません。最近は息子も、新しい色の器を作ったり、陶芸体験に力を入れたりしています。でも、それでいいんです。同じやり方だけが継承ではないと思うので。

さまざまな地域の活動にも関わってきましたが、それも特別なことをしている感覚はあまりなくて、ここで暮らしているから自然とそうなっていった、という感じなんです。小砂には、派手さはないかもしれないけれど、季節があって、人との距離が近くて、ゆっくり時間が流れている。そんな土地の空気が、器にも自然と出ている気がします。


楽しんでいたら、人は自然につながっていく

藤田製陶所/藤田峰子さん

結婚するまでは、宇都宮で音楽教師をしていました。今振り返っても、教員という仕事は私にとって天職だったと思います。子どもたちと向き合いながら、一緒に感動を味わう毎日でした。だから結婚を機に那珂川町へ来るときは、「まったく違う環境に身を置いてみようかな」という気持ちがあったんです。もちろん不安もありました。でも、自分で決めたことでしたからね。「だめだったら帰ればいい」。そんな軽い気持ちもどこかにあったと思います。

ところが、実際に暮らし始めると、カルチャーショックの連続でした。暮らし方も、人との距離感も、大家族での生活も、それまでの自分とはまるで違いました。当時は毎週のように宇都宮の実家へ帰っていましたよ。今だから笑って話せますけど、あの頃はとにかく必死でしたね。でも、自分で決めた人生だから。まずは10年がんばってみようと思ったんです。ここで良かった。と思えた日から転機になったのは、子どもたちの笑顔でした。里山の自然の中で、のびのび走り回っている姿を見ているうちに、「ああ、この環境で良かったのかもしれないな」と思えるようになっていったんです。犬の散歩をしていると、近所の方が「これ持っていきなよ」って、野菜を分けてくださったりして。そういう何気ないやり取りも、とてもうれしかったですね。

今、こうして振り返ると、ゴスペルグループの活動や「もうひとつの美術館」の立ち上げ、野焼き祭り、チャリティーコンサートなど、本当にいろんなことをやってきたなと思います。人と人をつなぐことが好きなんでしょうね。みんなで「楽しかったね」「良かったね」って言える時間を作るのが好きなんです。

いろいろな活動を続けていて感じるのは、楽しんでいると、人は自然につながっていくということです。「ちょっと手伝うよ」「面白そうだね」って、気がつくと仲間が増えていく。お祭りもコンサートも、たくさんの人とのご縁の中で続いてこれました。

子育ても同じです。私たち家族だけで育てたというより、地域のみんなで育ててもらった感覚なんです。近所の方が子どもの送迎をしてくれたり、行き会うと自然に声をかけてくれたり。そういう環境の中で育ったからなのか、この町の子どもたちは本当に優しいんですよ。

子どもたちが親以外の大人と自然に関わりながら育つことで、いろいろな人を受け入れる気持ちも育つ。それは、とても大切なことだと思っています。今では、息子が地域の仲間たちと餅つきイベントを続けていますし、娘も地域おこし協力隊として外国人向けガイドブックを制作するなど、独自に活動しながら、廃校になった小学校の活用に向けて動き始めています。

最初はこの町に上手く馴染めずにいた私が、今、こうして未来の話ができるのは、人とのつながりに支えられてきたからだと思います。これまでたくさんの人に支えてもらったご縁を、今度は次の世代へ渡していきたい。この町は、私にとってかけがえのない場所なんです。


小砂焼 藤田製陶所

栃木県那須郡那珂川町小砂2710 TEL.0287-93-0703
https://www.koisagoyaki.co.jp


藤田製陶所 藤田ファミリーの那珂川町のおすすめスポット

Nakagawa
武茂山 十輪寺 馬頭院
栃木県那須郡那珂川町馬頭188

那珂川町のまちなかを見守るように佇む馬頭院。鎌倉時代に開かれた歴史ある寺院で、本尊には馬頭観世音菩薩が祀られています。境内には県指定天然記念物の枝垂栗があり、春の新緑や秋の紅葉など四季折々の風景も魅力。静かな空気に包まれながら歩いていると、自然と心が落ち着いていきます。歴史と自然に触れながら、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

馬頭公園
栃木県那須郡那珂川町馬頭203

馬頭院のすぐ近く、小高い丘の上に広がる公園。芝生広場や遊歩道が整備され、那珂川町のまちなみや周囲の山々を眺めながら、のんびりと散策を楽しめます。春には桜が彩りを添え、季節ごとに異なる表情を見せてくれるのも魅力。馬頭院を訪れた際には、ぜひ足を延ばしてみたいスポットです。歴史ある寺院と豊かな自然をあわせて楽しめる、心地よい散歩コースです。

もうひとつの美術館
栃木県那須郡那珂川町小口1181-2

那珂川町の里山に佇む、旧小口小学校の木造校舎を活用した美術館。アール・ブリュット(生の芸術)やアウトサイダーアートをテーマに、年齢や障がいの有無、経験を超えた多様な表現と出会える場所です。どこか懐かしさを感じる校舎の雰囲気も魅力のひとつ。作品を鑑賞するだけでなく、表現する楽しさと自由な発想に触れられる、心温まるアートスポットです。


  • ホームページ・チラシ制作します
  • フェアリースクエア
  • とちぎの住まいづくり
  • 栃木県立博物館
  • フリーペーパー晩いいっぺとちぎについて フリーペーパー晩いいっぺとちぎについて
  • picture picture